モノカートリッジDL-102とフォノイコライザー完結編

前回はモノラルカートリッジDL-102をフォノイコライザーのMCレンジで使用することは達成できました。MCレンジで音割れせず迫力ある音の再生が出来るようになりました。

しかし、製作したアダプターには大きな問題点があります。
それは通常のステレオカートリッジに差し替えたい時、このアダプターの接続はすべて外し、フォノイコライザーへ接続直しをしなくてはいけない事です。これは結構面倒で使い勝手が悪いものです。
モノラルカートリッジDL-102専用のレコードプレーヤーでそれ専用のフォノイコライザーである場合は良いのですが、なかなかそのような贅沢な使い方はいらっしゃらないと思います。

1台のレコードプレーヤーでモノラルカートリッジとステレオカートリッジを交換して使用する場合を想定して新たなアダプターを製作してみることにします。

構想としては
(1) モノラルとステレオのカートリッジ交換の際接続変更はしない
(2) モノラル/ステレオ切替スイッチを設け、スイッチ切替だけでOKにする
(3) モノラルの場合は感度調節機能とフォノイコライザー片方回路だけの動作にする
(4) モノラル/ステレオ共にGNDがループせずハムノイズが出ない回路構成にする

■ まずモノラルにした時に必要な回路は以下の2つです。
 (A) DL-102使用を想定して感度調整回路を付ける

 (B) フォノイコライザー回路は1つにし、出力を分配する


■ ステレオにした時は通常のフォノイコライザーとの接続にする

これらの回路構成を切替スイッチで行います。もちろんどちらに切り替えてもGNDのループは出来ないように回路設計します。
そのようにして出来上がったのが下記のアダプター2号機です。

RCAジャックは絶縁タイプを使い信号系のGNDの取り回しは気を付けます。配線時GNDループにならないようにし、筐体に触れないようにします。
筐体自体はプレーヤーからのGNDラインとつなぎ最終的には単独でフォノイコライザーのGND端子と接続します。
このアダプターとフォノイコライザーを接続したところが下記の画像です。

これで当初の目的であるモノラル/ステレオのカートリッジ交換でも接続は変えずに切替スイッチだけで切り替えられるようになりました。
やはり使い勝手は初号機と比べ格段に良く、これで完成形とします。

・音の工房 フォノイコライザーSK-EQ10→ こちらSK-EQ10のページ

モノカートリッジDL-102とフォノイコライザー

先日フォノイコライザー「SK-EQ10-C」をお持ちのお客様からお問い合わせを頂きました。
「DENON製のモノラルカートリッジDL-102を購入して使用したが、MCレンジでは音が割れてしまう」と言うものでした。詳しくお尋ねすると
「MMレンジなら大丈夫だが音に迫力が無い、MCレンジの方が良い音がするのだが時々音割れを生じる。何とかMCレンジで音割れせず使う方法は無いか」と言うものでした。

■ DL-102の音割れを解消する方法
DL-102はDENON製のモノラルカートリッジで評判もなかなかいいものです。


まず、DL-102の仕様を見てみます。(上の画像はDENONのHPから)
 ・モノラル専用MCカートリッジ
 ・出力電圧 3mV
 ・周波数特性 50Hz~10kHz
 ・インピーダンス 240Ω
 ・針圧 3±1g
 ・自重 13g

このカートリッジはMC(ムービングコイル)タイプですが出力電圧が3mVもありMMカートリッジ並みの出力です。
DENONさんの方でも「MM端子に直結できる」と書いてあります。
通常ならおとなしくフォノイコライザーのMM端子側を使うところですが、前述のお客様のようにMC側につないでみる方もいらっしゃいます。その結果音が割れてしまう、しかし音自体はMM側よりMC側の方が良い音であったのです。
そのため何とか音割れしないでMC側で使うことが出来ないものかと相談された次第でした。

フォノイコライザーSK-EQ10-CのMMとMCの定格入力範囲は
・MM側 2~10mV
・MC側 0.2~0.8mV
としています。
MC側は定格入力は0.8mVとしています、最大でも1.5mV程度まででしょう。それを超えると音割れになります。
定格仕様からしてもMM側で使用するのが普通です。しかし、出来るだけ良い音で聴きたい、レコードの迫力を感じたいという気持ちは皆さんあると思います。
そこで、何とかDL-102をMC側で聴く方法は無いか考えてみました。

まず音割れの原因は・・・
フォノイコライザーの入力定格が0.8mV、DL-102の出力は3mVですので、過大入力による音割れです。
DL-102からの信号を何らかの方法で減衰してやらなければいけません。
MC側の入力はフォノイコライザー内部でMCトランスに接続されています。MCトランスの入力に並列または直列に抵抗を入れ減衰させる方法が最も簡単で確実な方法かと思います。
今回は減衰量を可変できるように直列にサーメットトリマ入れてみることにします。

この方法により入力信号が減衰され過大入力にならず音割れを解消することが出来ます。
自分のシステムに合うように可変調節できるようにします。


■ モノラルカートリッジもう一つの問題
じつはモノラルカートリッジ使用の場合もうひとつの問題があります。

一般のカートリッジはステレオですので左右2つの信号が出ています。フォノイコライザーも左右2つの回路が入っていてそれぞれ増幅し出力するように作られています。
しかしモノラルカートリッジはひとつだけですのでフォノイコライザーにある2つの回路の入力に同じ信号を入れることになります。
実はこれをやるとアース(GND)ラインがループになり環境によってはハムノイズが生じる場合があるのです。
具体例を下記に図で示し説明します。

(A)ステレオカートリッジの一般的な例

ステレオカートリッジの一般的な接続経路。正常にステレオで動作します。


(B)モノラルカートリッジのお勧めできない例

モノラルカートリッジをステレオのイコライザーとアンプに接続した例です。この接続はよくやられる接続ですが、これをやるとアース(GND)ラインがループを形成しハムやノイズの影響を受けやすくなります。
モノラルカートリッジを付けると「ブーン」と言うノイズが出てくる場合はこのループが問題の場合が多いです。

(C)モノラルカートリッジのお勧め接続例

モノラルカートリッジのお勧めする接続例です。
カートリッジからの信号はフォノイコライザーの片方(図の例では左チャンネル)だけを使い入力します。その出力を2分配してステレオアンプに接続します。
これでカートリッジとフォノイコライザー間にループは発生しないでノイズ発生のリスクが大幅に軽減されます。

■ モノラルカートリッジDL-102用信号調節アダプターを作ってみる
以上の事を盛り込んだDL-102用のアダプターを製作してみました。
このアダプターはレコードプレーヤーとフォノイコライザーの間に取り付けDL-102をMC側(MCモード)で安心して使えるようにするためのものです。

フォノイコライザーの左チャンネルだけを使用している例です。
(画像の左下)からレコードプレーヤー(DL-102)の線がアダプターに入り信号調節を経てフォノイコライザー左チャンネルに入ります。フォノイコライザー出力の左チャンネルからアダプターに戻った信号は2又で(画像の右下の赤白RCA)ステレオアンプに接続されます。

前述のお問い合わせのお客様に使用してもらい良好な結果を頂きましたが、通常のステレオカートリッジとDL-102の入れ替えの際、接続変更が多いのが難点とのご指摘を頂きました。
次は接続変更なしにステレオ/モノラル切替スイッチを付けてスイッチ切替だけで変更できるアダプターを考えてみたいと思います。

音の工房: https://otonokobo.jp/

フォノイコライザーSK-EQ10: https://otonokobo.jp/01_products/SK-EQ10.html