
何年か前に製作した真空管アンプがあったのでそれをばらし、シャーシとトランス類を流用して新たに「全段差動プッシュプル真空管アンプ」を作ってみました。
上記写真が完成したその「全段差動プッシュプル真空管アンプ」です。
どうせ新規に作るならいろいろ遊べるアンプにしようと思い以下の特長・機能を盛り込むことにしました。
■ 全段差動プッシュプル回路にする
プッシュプルアンプならやはり音質重視の全段差動アンプです。使う真空管は5極管ですが全て3極管接続にし出力を犠牲にしても音質を優先した贅沢な回路構成にしました。
この音を聴いてしまうと、もう一般のプッシュプル回路には戻れません。
■ 何種類かの真空管が使用できるようにする
それぞれの真空管には規格があり足のピン配置も違い、普通1種類の真空管しか使えません。そこで、足のピン配置が同じな何種類かの真空管でも動作できる回路にしてみました。使用可能な真空管は以下のものです。
・EL34
・6CA7
・5881
・6L6
・6V6
などです。
■ 負帰還量を変えられるスイッチを付ける
真空管回路で負帰還(NFBとかフィードバック量という)をかけることで電気的性能を向上することができます。ただその分もともとその真空管の持っている生特性が薄れていくことにもなります。そこで、この負帰還量を変えられるスイッチを付けて音の違いを比べることができる機能です。無帰還、10dB帰還、20dB帰還を切り替えるようにしてみました。
■ バイアス自動調節回路付
バイアス自動調節回路を付けることにより、真空管交換も手軽にできます。また長期間使用していてもバイアス調整をする必要がありません。
■ ヘッドホン端子付き
大型真空管アンプではヘッドホン端子が付いているものがあまりありません。大型アンプだからスピーカーで聴くのが当たり前という感覚かもしれません。でも全段差動プッシュプルアンプの音をヘッドホンでも聴いてみたいと思いつけてみました。
まずは以前作ったアンプを全部ばらしてシャーシとトランスだけを再利用します。

電源トランス(PH185)、出力トランス(FE-25-8)はタンゴ(TANGO)のトランスです。タンゴのトランスは今ではISOと言う会社が引き継いでいますがとても高価になっています。

主要な部品をシャーシに組付けします。

PH185の電源トランスではEL34の真空管を使用したときヒーター電流が足りないため、ヒーター用のトランス(写真の手前にあるトランス)を追加で取り付けました。

負帰還の帰還量を切り替えるスイッチです。
無帰還、10dB帰還、20dB帰還の3段階切替です。
帰還量を増やすとダンピングファクターが大きくなり、歯切れのよいアタック感が増します。また周波数特性は良くなり音の再現性も良くなり忠実度が増します。
帰還量を増やすと良いことばかりのように感じますが、実際に聴いた音は何とも言えません。なぜかというと元々持っている真空管の良さが薄れるからです。
真空管にはそれぞれの癖があり特徴があります。それゆえあの真空管の音がいいとかこの真空管が最高とか、真空管の生特性に魅力を感じるところがあるからでなのでしょう。
・無帰還はその真空管の生の特性そのものです。粗削りで癖が強いのが魅力です。
・10dB帰還は程よく補正しもっとも聴きやすいのではないでしょうか。
・20dB帰還は少々やりすぎ感ありますがこれはこれでダンピング効いていい音です。

今回の設計では先にも述べましたように数種類の真空管に差し替えできるようにしました。
交換できる真空管は出力管で音を決定づけるメインの真空管です。プッシュプル左右チャンネル2本づつの計4本です。
上記写真の左側4本がEL34です。そして右側4本が5881WXTです。
(その上の2本は6SN7で前段の増幅を担っています。この真空管は交換できません。)
とりあえずEL34と5881WXTの2種類の真空管が用意できましたので差し替えてそれぞれの音を聴いてみることにします。

上記がEL34を装着した写真です。
中音が綺麗なとてもすっきりした音色です。もちろん低音高音も申し分なく全体にバランスの取れた優秀なアンプと言う感じです。
EL34は普通のプッシュプル回路なら40~50Wは出せる能力をこの全段差動では8Wに抑えて音質に重点をとっています。実際8Wもあれば一般家庭では十二分な音量で重低音も感じることができます。

こちらが5881WXTに差し替えたところです。
5881WXTの音は低域に重きがあるどっしりした感じを受けます。スケールの大きな曲が似合いそうでオーケストラ・クラシックにも向きそうな感じがします。
EL34もそうでしたが、長い時間聴いていても聴き疲れしない優れた音質と感じました。
帰還量を変えるとまた違った聴こえ方がして自分の好みに合った音探しも楽しみになります。当初の思惑通り楽しめるアンプができました。

後面はこのようになっています。


周波数特性と歪率特性です。帰還量(NFB)によってこの特性も変わってきますが上記はNFB20dB帰還の時の特性です。
周波数は-3dBの範囲で5Hz~50,000Hzです。
歪率は8Wで6%です。
| 品名 | 全段差動プッシュプル真空管アンプ |
| 周波数特性 | 5Hz~50,000Hz (8Ω負荷1W出力時-3dB) |
| 出力 | 8W+8W (8Ω負荷) |
| 歪率特性 全高調波歪特性 | 0.1%(1W) |
| 利得 | 無帰還:43.3dB NFB10dB:31.5dB NFB20dB:23.7dB |
| 残留ノイズ | 0.5mV以下(NFB10dB) |
| ダンピングファクター | 無帰還:DF=2.0 NFB10dB:DF=9.3 NFB20dB:DF=22.2 |
| 入力感度 | 0.15V (NFB10dB:8Ω4W出力時) |
| 入力インピーダンス | 50kΩ |
| スピーカー出力インピーダンス | 4~8Ω(16Ω可) |
| 電源電圧と消費電力 | AC100V±5% 50/60Hz 消費電力118W |
| 外形寸法 | (幅)408×(奥行)290×(高)175 mm |
| 質量 | 約13kg |
| 付属真空管 | EL34(4本) 5881WXT(4本) 6SN7(2本) |
| 入力端子形状 | RCA |
| 出力端子形状 | ターミナル バナナプラグ対応 |
| AC100Vコネクタ形状 | 3P ACインレットタイプ |
| 使用ヒューズ定格 | 3A125V(または3A250V) |
| 出力回路名 | 全段差動式プッシュプル回路 |
| 付属品 | 電源ケーブル、取扱説明書、保証書 |
本機の特長は何といっても音質重視の「全段差動プッシュプル真空管アンプ」です。
そして手軽に違う種類の真空管に交換でき音の違いを楽しむことができます。
そのうえ、帰還量を切り替えることができ同じ回路でもまた違った音を楽しむことができます。
このように音の違いを楽しむ遊べる真空管アンプにしてみました。真空管アンプを何台か持っているかのようです。




























