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300B真空管の聴き比べと品質比較

300Bの真空管、メーカーの違いによりどの程度音に違いがあるのか聴き比べをしてみました。
まずは同一回路(A級シングル回路)においては電気的性能の差はほぼ同じで大きな違いはありませんでした。
今回試験した300B真空管は3つのメーカーのものです。

■ (1) JJ社製 JJ-300B
「ジェージェー」で親しまれているスロバキアの真空管製造会社JJ Electronic社の300Bです。

■ (2)PSVANE製 300B
中国湖南省にある長沙恒陽電子有限公司でブランド名PSVANE(プスバン又はプスヴァン)の300Bです。

■ (3)Electro-Harmonix社製 300B GOLD
Electro-Harmonix社製の300B-GOLDでグリッド電極に金メッキをしたもの

聴き比べに使用する機器は、
・真空管アンプ:弊社音の工房のSK-300
・スピーカー:JBLのSTUDIO290
で行いました。
私の個人的評価であり、何かの基準に対する相対評価でもありません。
もちろん私はプロのオーディオ評論家でもなく、他の人より良い耳を持っているという自覚も特にありません。
ただ、日々真空管アンプ作りをしていて音出し試験も行っているためか音のひずみや割れなど違和感はすぐに感じ取れるのはあります。
プロの評論家でない者が聴き比べをおこない感じたままを書いたものであることをまずは申し上げておきます。

■ 300B聴き比べ
まずは3種類の300Bを聴いてみて全体の感想ですが、違うメーカーとは言え今回比較した3種類は音質に極端な違いは感じられず、どれも似た傾向の音質であると感じました。
以下各300Bの聴いた感想です。

■ (1) JJ社製 JJ-300B

角の取れた聴きやすい音ながら明瞭感もあり、音に余裕がある豊かさを感じました。安定感は抜群です。
・中音:明瞭感がありきれい
・高音:明るく聴きやすい
・低音:充分な豊かさがあり安定感がある

■ (2)PSVANE製 300B

とても聴きやすい音で長時間聴いていても疲れない感じを受けました。ついつい次の曲も次の曲も聴いてみたいと思わせる良い音と感じました。
・中音:抵抗なくすーと入ってくる
・高音:目立ちすぎず奇麗さがある
・低音:しっかり目で豊かさもあり

■ (3)Electro-Harmonix社製 300B GOLD

ずば抜けて特徴があるということはなく、大きな癖もなく優等生という感じ。300Bとして間違いない音を聴かせてくれました。
・中音:明瞭感がありきれい
・高音:きめ細かさもあり
・低音:誇張しすぎず申し分ない

以上のように聴き比べしてみて音質に関してはどの球も十分満足できる音であることは間違いないと感じました。順位をつけたり優劣をつけることは出来そうにありません。さすが300Bと言ったところです。

■ 次に外観や品質面での比較を行ってみました。
まずは真空管の収納箱です。

今回試験をした3種類の収納箱です。
左から「JJ社製JJ-300B」、「PSVANE製300B」、「Erectro-Harmonix社製300B GOLD」

上の画像はJJ社製JJ-300Bの収納箱の中の様子です。
JJ製は中にスポンジの緩衝材があり、真空管形状に型取りされていて真空管がすっぽり入るものです。箱の外からの衝撃にはびくともしない感があります。真空管の収納箱としては完璧かと思います。

上の画像はPSVANE300Bのものです。Erectro-Harmonixの300Bも同じような同形状収納箱です。
箱の一部が真空管の頭部を押さえて固定する一般的な方法の収納箱です。

大型の真空管は輸送や移動中に振動で壊れやすいため、いかに防振保護ができるかが重要になります。
この防振保護に関してはJJ社製が圧倒的に優位性があります。

■ 最後に外観の違いや品質について

真空管自体の作りですが、これもJJ社製JJ-300Bは他のものと違い真空管のガラス管厚みが厚く、大きさや重さが20%ほど大きくなっていて最も安定感があります。

長年JJ-300Bを販売していますが不具合が非常に少なく製品としての品質はかなり高いものと思われます。
下記は3種類の300Bの外観寸法等の比較表です。

JJ-300BPSVANE 300BEH 300B-GOLD
全長(高さ)mm165150150
管最大径 φ61.56160
頭部外径 φ443839
袴部径 φ272729
重さ g12689110

品質なども含め総合的にはJJ社製JJ-300Bが最も良いかと思いますが、音質+コストパフォーマンスからいうとPSVANE製300Bになるかと思います。

窓のカーテン修復

音の工房の一角にある縦長窓のカーテンはもう何年も前からスライド機構が壊れていて開かずの窓となっています。
せっかくの明り取りの窓なのでこのカーテンスライド機構の修理を行ってみようと思います。

まずはカーテンごと取り外し、壊れた原因を探っていきます。

カーテンを外してみました。
布カーテンとレースカーテンの二枚構造です。
本来は横のひもを引くとブラインドのように上方向にカーテンが折り畳まれ開くはずです。
ひもは布カーテン用とレースカーテン用の2種類ありますが、長さがバラバラで途中で切れてしまっていないか心配です。

スライド機構の部品をレールから外して絡まったひもを全部外します。
切れているひもは無いようなので一安心

よーく観察するとスライド機構自体は壊れておらずひもが外れて溝に食い込んでいたのが動かない原因でした。

布用とレース用それぞれのひもを丁寧にほどいて正しい箇所に通してスライドの機構部分を組み立てます。

正しく組み立てたスライド機構部分

布カーテンとレースカーテンのガイドリングにひもを通していきます。
左右のひもの長さを合わせないときれいにスライドしません。何度もやり替えました。
窓につけて試運転です。

ちゃんと動きます。
布カーテンはスムーズに動き上方向にたたまれていきます。左右のひもの長さも合っていたようでずれもないようです。

次にレースのカーテン、これもちゃんとスライドし折り畳まれていきます。

何年かぶりでカーテンの開く窓になりました。
明り取りや空気の入れ替えができるようになりました。

こんなに気持ち良い空間になるのだったらもっと早く直しておけばよかった・・・と何でも修復した後は思うものです。

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モノカートリッジDL-102とフォノイコライザー完結編

前回はモノラルカートリッジDL-102をフォノイコライザーのMCレンジで使用することは達成できました。MCレンジで音割れせず迫力ある音の再生が出来るようになりました。

しかし、製作したアダプターには大きな問題点があります。
それは通常のステレオカートリッジに差し替えたい時、このアダプターの接続はすべて外し、フォノイコライザーへ接続直しをしなくてはいけない事です。これは結構面倒で使い勝手が悪いものです。
モノラルカートリッジDL-102専用のレコードプレーヤーでそれ専用のフォノイコライザーである場合は良いのですが、なかなかそのような贅沢な使い方はいらっしゃらないと思います。

1台のレコードプレーヤーでモノラルカートリッジとステレオカートリッジを交換して使用する場合を想定して新たなアダプターを製作してみることにします。

構想としては
(1) モノラルとステレオのカートリッジ交換の際接続変更はしない
(2) モノラル/ステレオ切替スイッチを設け、スイッチ切替だけでOKにする
(3) モノラルの場合は感度調節機能とフォノイコライザー片方回路だけの動作にする
(4) モノラル/ステレオ共にGNDがループせずハムノイズが出ない回路構成にする

■ まずモノラルにした時に必要な回路は以下の2つです。
 (A) DL-102使用を想定して感度調整回路を付ける

 (B) フォノイコライザー回路は1つにし、出力を分配する


■ ステレオにした時は通常のフォノイコライザーとの接続にする

これらの回路構成を切替スイッチで行います。もちろんどちらに切り替えてもGNDのループは出来ないように回路設計します。
そのようにして出来上がったのが下記のアダプター2号機です。

RCAジャックは絶縁タイプを使い信号系のGNDの取り回しは気を付けます。配線時GNDループにならないようにし、筐体に触れないようにします。
筐体自体はプレーヤーからのGNDラインとつなぎ最終的には単独でフォノイコライザーのGND端子と接続します。
このアダプターとフォノイコライザーを接続したところが下記の画像です。

これで当初の目的であるモノラル/ステレオのカートリッジ交換でも接続は変えずに切替スイッチだけで切り替えられるようになりました。
やはり使い勝手は初号機と比べ格段に良く、これで完成形とします。

・音の工房 フォノイコライザーSK-EQ10→ こちらSK-EQ10のページ

モノカートリッジDL-102とフォノイコライザー

先日フォノイコライザー「SK-EQ10-C」をお持ちのお客様からお問い合わせを頂きました。
「DENON製のモノラルカートリッジDL-102を購入して使用したが、MCレンジでは音が割れてしまう」と言うものでした。詳しくお尋ねすると
「MMレンジなら大丈夫だが音に迫力が無い、MCレンジの方が良い音がするのだが時々音割れを生じる。何とかMCレンジで音割れせず使う方法は無いか」と言うものでした。

■ DL-102の音割れを解消する方法
DL-102はDENON製のモノラルカートリッジで評判もなかなかいいものです。


まず、DL-102の仕様を見てみます。(上の画像はDENONのHPから)
 ・モノラル専用MCカートリッジ
 ・出力電圧 3mV
 ・周波数特性 50Hz~10kHz
 ・インピーダンス 240Ω
 ・針圧 3±1g
 ・自重 13g

このカートリッジはMC(ムービングコイル)タイプですが出力電圧が3mVもありMMカートリッジ並みの出力です。
DENONさんの方でも「MM端子に直結できる」と書いてあります。
通常ならおとなしくフォノイコライザーのMM端子側を使うところですが、前述のお客様のようにMC側につないでみる方もいらっしゃいます。その結果音が割れてしまう、しかし音自体はMM側よりMC側の方が良い音であったのです。
そのため何とか音割れしないでMC側で使うことが出来ないものかと相談された次第でした。

フォノイコライザーSK-EQ10-CのMMとMCの定格入力範囲は
・MM側 2~10mV
・MC側 0.2~0.8mV
としています。
MC側は定格入力は0.8mVとしています、最大でも1.5mV程度まででしょう。それを超えると音割れになります。
定格仕様からしてもMM側で使用するのが普通です。しかし、出来るだけ良い音で聴きたい、レコードの迫力を感じたいという気持ちは皆さんあると思います。
そこで、何とかDL-102をMC側で聴く方法は無いか考えてみました。

まず音割れの原因は・・・
フォノイコライザーの入力定格が0.8mV、DL-102の出力は3mVですので、過大入力による音割れです。
DL-102からの信号を何らかの方法で減衰してやらなければいけません。
MC側の入力はフォノイコライザー内部でMCトランスに接続されています。MCトランスの入力に並列または直列に抵抗を入れ減衰させる方法が最も簡単で確実な方法かと思います。
今回は減衰量を可変できるように直列にサーメットトリマ入れてみることにします。

この方法により入力信号が減衰され過大入力にならず音割れを解消することが出来ます。
自分のシステムに合うように可変調節できるようにします。


■ モノラルカートリッジもう一つの問題
じつはモノラルカートリッジ使用の場合もうひとつの問題があります。

一般のカートリッジはステレオですので左右2つの信号が出ています。フォノイコライザーも左右2つの回路が入っていてそれぞれ増幅し出力するように作られています。
しかしモノラルカートリッジはひとつだけですのでフォノイコライザーにある2つの回路の入力に同じ信号を入れることになります。
実はこれをやるとアース(GND)ラインがループになり環境によってはハムノイズが生じる場合があるのです。
具体例を下記に図で示し説明します。

(A)ステレオカートリッジの一般的な例

ステレオカートリッジの一般的な接続経路。正常にステレオで動作します。


(B)モノラルカートリッジのお勧めできない例

モノラルカートリッジをステレオのイコライザーとアンプに接続した例です。この接続はよくやられる接続ですが、これをやるとアース(GND)ラインがループを形成しハムやノイズの影響を受けやすくなります。
モノラルカートリッジを付けると「ブーン」と言うノイズが出てくる場合はこのループが問題の場合が多いです。

(C)モノラルカートリッジのお勧め接続例

モノラルカートリッジのお勧めする接続例です。
カートリッジからの信号はフォノイコライザーの片方(図の例では左チャンネル)だけを使い入力します。その出力を2分配してステレオアンプに接続します。
これでカートリッジとフォノイコライザー間にループは発生しないでノイズ発生のリスクが大幅に軽減されます。

■ モノラルカートリッジDL-102用信号調節アダプターを作ってみる
以上の事を盛り込んだDL-102用のアダプターを製作してみました。
このアダプターはレコードプレーヤーとフォノイコライザーの間に取り付けDL-102をMC側(MCモード)で安心して使えるようにするためのものです。

フォノイコライザーの左チャンネルだけを使用している例です。
(画像の左下)からレコードプレーヤー(DL-102)の線がアダプターに入り信号調節を経てフォノイコライザー左チャンネルに入ります。フォノイコライザー出力の左チャンネルからアダプターに戻った信号は2又で(画像の右下の赤白RCA)ステレオアンプに接続されます。

前述のお問い合わせのお客様に使用してもらい良好な結果を頂きましたが、通常のステレオカートリッジとDL-102の入れ替えの際、接続変更が多いのが難点とのご指摘を頂きました。
次は接続変更なしにステレオ/モノラル切替スイッチを付けてスイッチ切替だけで変更できるアダプターを考えてみたいと思います。

音の工房: https://otonokobo.jp/

フォノイコライザーSK-EQ10: https://otonokobo.jp/01_products/SK-EQ10.html

SK-300にヘッドホン端子は付くか?

従来ハイグレード真空管アンプ「SK-300-J」にはヘッドホン端子は付いていませんでした。
当時は「300Bの音をヘッドホンで聴いてみたい」、「SK-300-Jにヘッドホンは接続できないか」とのお問い合わせを頂きました。そして立て続けにこの手のご質問をもらた時期がありました。

これらのご質問については以下の様にお答えしていました。
———————————————–
300Bの音を出来るだけいい音で聴いてもらうためスピーカ―出力の途中に余計な回路を入れたくなくストレートにスピーカー端子に出力しています。
ヘッドホン端子を付けるにはスピーカー出力の途中にヘッドホン回路切替の接点が入ってしまいます。そのような余計なものを付けたくないためSK-300-Jにはヘッドホン端子は付けていないのです。
———————————————–

このように回答していました。
それでは、ヘッドホン回路を入れた場合と無い場合の比較をちゃんと行ったのかと言うと行っていませんでした。
理論(理屈)的に変なものは無い方がいいに決まってると言うことに固視していました。

そこで、今回その比較をちゃんとやってみることにしました。果たしてヘッドホン回路を入れるとスピーカーからの音に違いが出るのか、実際に聴いてみて違いが出るのか、理論・理屈だけでなく裏付けを取って見ることです。

まず、スピーカ―出力部とヘッドホン回路の関係を図で示してみます。

通常は出力トランスからそのままスピーカー端子につながっていますが、ヘッドホン回路を使う場合ヘッドホンとスピーカーへの切り替えスイッチを通してスピーカー端子に行くことになります。
このスイッチはヘッドホン端子と連動していて、ヘッドホンのプラグを挿すとジャック(ヘッドホン端子)の方に付いているスイッチが動作する仕組みです。
そのため、ヘッドホンを挿すと自動的にスピーカーの音が聞こえなくなる様になっています。

さて、それでは遅まきながらヘッドホン端子の有る無しでどれくらいの違いがあるか実際に確認してみることにします。
音に違いが出るのか実際に聴いてみます。また実際に電気的に測定し測定値にどれくらいの違いがあるか確認してみます。

比較の方法ですが以下の事をやってみます。
(1)実際に人の耳で聴いた印象・音に違いが感じられるか
(2)周波数特性の違いを測定機で計測
(3)歪率の違いを測定機で測定
(4)ダンピングファクターの違いを計測
(5)出力トランスからスピーカー端子までの線材の抵抗値の違い

この5項目で比較した結果は。
■(1)実際に人の耳で聴いた印象・音に違いが感じられるか
まず実際に聴いてみましたが、ヘッドホン回路有る無しでの音の違いは全く分かりませんでした。
私には音量、音質共に違いは分かりませんでした。

■(2)周波数特性の違いを測定機で計測
次に周波数特性を計測してみました。どちらもほぼ同じ値で大きな違いは見出せませんでした。

ヘッドホン回路無しの20kHz
ヘッドホン回路有りの20kHz

■(3)歪率の違いを測定機で測定
歪率も計測してみました。こちらも大きな違いはなくほぼ同特性です。

ヘッドホン回路無しの1000Hzの歪率
ヘッドホン回路有りの1000Hzの歪率

■(4)ダンピングファクターの違いを計測
ダンピングファクター計測結果は
・ヘッドホン回路無の場合→ 4.6
・ヘッドホン回路有の場合→ 4.5
とほとんど変わりません。

■(5)出力トランスからスピーカー端子までの線材の抵抗値の違い
ヘッドホン端子を設けたことにより、内部のスピーカー配線が数10cm長くなります。その長くなった線材の抵抗を計測してみました結果→ 0.01Ωでした。
使用した線材はAWG20で規格値から算出した値とそう離れてはいませんでした。

以上の測定結果ですが、測定誤差を考えるとどれも違いはほとんど見られず、音質に大きく影響するとは思われないものでした。
実際聴いてみてもその違いは分かりませんでした。
結論としてヘッドホン回路の有り無しで目立った違いはなく、音はほとんど変わることはないと思われます。

このことを受けて、SK-300-Jにヘッドホン端子を付けることにしました。
300Bの音をヘッドホンでも楽しむことが出来ます。夜もSK-300で音楽を楽しむことが出来ます。
SK-300もいろいろな場面で楽しむことが出来るようになり、オーディオ趣味の範囲が広がります。

ヘッドホン端子を付けた「SK-300-J」試作機

近日発売します、お楽しみにしてください。→2025年4月より標準搭載として販売開始しました。

■ヘッドホン端子付販売開始しました→こちら https://otonokobo.jp/01_products/SK-300.html
■音の工房ホームページはこちらhttps://otonokobo.jp/

真空管試験機の製作(2)

さて部品取り付けまでできて、いよいよ配線です。
その前に電源部分の電子回路を基板にし配線部の小型化を図ります。
設計回路に従い部品を取り付けていきますが少々基盤が小さかったようです。この小ささがあとで苦労することになります。

まず電源回路だけを配線し動作試験しました。

基板を載せて動作試験です。
まずヒーター回路。
数種類の真空管を使いますので真空管ごとにヒーター電圧が違うため切り替え回路が必要です。

ヒーターの切り替え回路はうまく動作しました。

次に2系統の電源回路ですが、ここはリップルとノイズが予想以上に多く、その対策で一部回路変更とフィルター回路の追加を行いました。
基板に余裕がないため基板からはみ出て部品配置になりました。
その後すべての配線を行い全体調整です。いくつかの修正を加え概ね設計通りの動作が確認でき「真空管検査機」の完成です。

しかし、実際に使ってみると入力電圧測定端子の位置が使いづらいので変更。部品が付いてからのシャーシ穴開け作業は困難を極めます。
さっそく真空管を挿して試験をしてみました。
なかなか使い勝手もよくなり、安定した動作をしています。

これで真空管のペア選別や動作確認が容易にできるようになります。

この真空管試験機は音の工房真空管アンプ専用機で汎用性はないですが、音の工房にとっては大きな力になること間違いありません。大切に使用していくことにします。

真空管試験機の製作(1)

真空管全盛の昔には「真空管試験機」と言う測定機があり、今でも使用している方がいます。
いろいろな種類の真空管の性能を計測する測定です。

  Wikipediaの画像

ただこの測定機は真空管の代表的な値を測定するだけで、詳細なデーターを測ることは出来ません。真空管が大体使えるものか、かなり劣化しているか、壊れているか程度のものでした。

さて、ステレオ真空管アンプを作ろうとすると右と左の増幅度の差が気になってきます。左右に同じ信号を入れた時、出てくる出力も左右同じでなければ音の定位がずれることになります。
つまり左右二つのアンプの増幅率をきっちり合わせる必要があるのです。そのためには左右の真空管特性が揃ったものを使う必要があります。

真空管は近代部品のように同じ性能のものを確実に作るこは出来ません。そこで多くの真空管を測定して性能の近いものを2本選び出し、ペア真空管として販売されています。それを左右の回路に使うと性能の揃ったステレオアンプが出来上がるのです。

ただ、市販のペア真空管は代表的な条件での測定でペアを決めています。
ところが作るアンプの条件が違うと必ずしも同じ増幅度にならないことがあります。
また、フォノイコライザーのような高い増幅度のアンプでは市販のペアでは対応できない事があります。

そこで、真面目に真空管アンプを作ろうとするとそのアンプに合った特性の真空管を選ばなくてはいけないことになります。
そこで音の工房のアンプに合わせた真空管試験機を新たに製作することにしました。

この試験機は音の工房アンプに特化したもので汎用試験機でありりません。
アンプと同じ動作状態で静的特性と動的特性を測定でき、精度の高いペア真空管選別が出来るようにします。
製作手順としては
(1)真空管試験機回路設計
(2)必要部品収集
(3)シャーシ配置設計
(4)シャーシ穴開け加工
(5)部品取り付け
(6)配線
(7)配線チェック、電源投入、動作確認
(8)調整検査
(9)完成

さて順調に進むでしょうか。
製作開始です。
回路設計が終わり部品もほぼ揃いました。
さっそくシャーシの配置設計です。

この配置設計では使いやすさを優先し部品同士の干渉を考慮し配置します。
部品の穴位置を決めシャーシに印をつけます。

穴開け作業。この作業が一番散らかり大変な作業です。
丸穴はボール盤やドリルで出来ますが、四角穴は大変です。大まかな穴を空けてあとはヤスリで角穴に仕上げていきます。根気のいる作業です。

穴開けが出来れば半分以上終えた気分になります。
さっそく部品が正しく付くか取り付けてみます。

ビンテージ真空管ラジオ修復

ひょんなことから入手した古い時代の「真空管ラジオ」。
今回はこの真空管ラジオの修復、現代風に言うとレストアの記録です。

外見は比較的良い状態ですが、中を見るとボロボロです。もちろん動きません。
昭和12年頃製造されたナショナル製「国民受信機Z-3」というビンテージ真空管ラジオです。
ナショナルは現在のパナソニックの前身松下電器のブランド名です。
昭和12年と言うとまだ戦前で90年ほど前に作られたものです。この古い古いラジオを何としても動作させたいものです。

使用されている真空管は
・UY-57S:高周波増幅用
・UY-57S:検波用
・3YP1 :電力増幅用
・KX-12F:整流用
の4本です。
外観のほこりを取り拭いたら綺麗になりました。整流用のKX-12Fはゲッターがほとんど無くなり真空度が下がっているようです。
回路を調べましたら、回路仕様は高1ラジオ(1-V-1)でした。

中身をよく見てみるとこのラジオ、一度手が加えられているようでコンデンサ類が新しいものと交換されています。抵抗類はオリジナルのものの様ですが、さすがに昔のコンデンサは90年の年月劣化がひどかったのでしょう。
配線材料も昔のものでちょっと触るとボロボロ壊れてきます。この状態ではもう全部ばらして一から作り直すしかありません。

電源トランスもこんな状態です。
ただ内部の断線はなく絶縁抵抗も良好です。各電圧もちゃんと出ていて整備すれば使えそうです。

この当時はまだビニール皮膜の線材が登場していなく銅線に布被覆をかぶせ高周波ニスを塗付し絶縁を確保していたようです。

そして重要部品のバリコンとコイル・・・これもオーバーホールすれば何とか使えそうです。
結局完全に壊れていて使えない部品は以下の3点。
・チョークトランス:断線して使えません。現代の相当品を使います。
・再生用ボリューム:完全に壊れています。相当品を使います。
・整流用真空管KX-12F:壊れてます、どうしよう?

その他の主要な重要部品は何とか使えそうです。
・電源トランス:OK
・アンテナコイル、検波コイル:OK
・バリコン:OK
・KX-12F以外の真空管:OK
・マグネチックスピーカー:OK

抵抗とコンデンサと配線材は現代の新品と交換。

部品を全部ばらしました。錆とほこりだらけ。
こういうビンテージ物の修復はどの部品を生かしてどの部品を交換するかが難しいです。
何でもかんでも交換してしまうと違うものが出来上がります。
使えるものは出来るだけオリジナルのものを使い、どうしても使えないものは交換するというのが常道でしょうかね。

バリコンも分解して細かなところまで錆取り、掃除、オーバーホールです。
使われているビスは旧JISねじ。現代のISOネジには合いませんので、このネジを大事に使いまわさなくてはいけません。
マイナスねじなので外すのも取り付けるのも回しづらい。


シャーシーの錆がひどいので綺麗に錆を落として塗装します。

シャーシを塗装したら見違えるほど綺麗になりました。
なんとか行けそうです。

ここまで来ましたが解決していない問題が整流用の真空管KX-12Fをどうするかです。
オークションなどで入手しようとも思いましたが、整流管は酷使しやすく入手しても劣化しているものやすぐにダメになるものばかりです。
そこで、ここは割り切って整流管を使わず現代の素子ダイオードを使って整流することにします。
ダイオードと直列に1kΩ5Wのセメント抵抗を入れKX-12Fの代用としました。B電圧目標180~190Vです。
ダイオードにしましたので平滑用電解コンデンサーは大きな容量のものが使えるようになります。ここでは47μF400Vを使用しました。これで電源回路は完璧でしょう。
使わないKX-12Fはお飾りでソケットに挿しておくだけです。
元通りの完全再現回路にならず少々残念ですが、最終目的のラジオを鳴らすに向け修復を進めます。

オーバーホールした部品を取り付けていきます。
現代部品のチョークトランスと再生用ボリュームが光り輝きちょっと他の部品との差異がありすぎ。

真空管のヒーター回路は大きな電流が流れるので太めの配線を使用して配線を進めます。
今の配線材はビニール線材なので柔らかく、使用部品も小型化になったため内部はガラガラ、配線は比較的やり易かったです。

この当時はシールド線が無かったためか単線の周りにアース線をぐるぐる巻きにしてシールド効果を保っていたようです。ここはもちろん現代のシールド線を使います。
配線完了です。

まず真空管に掛る電圧を確認調整します。
B電圧は185Vになりました。
各部予定の電圧範囲で一安心。真空管も大丈夫のようです。

ドキドキしながらスピーカーをつなぎ再度電源ON、何とNHKアナウンサーの声が聴こえてきました。ちょっと感動です。
このラジオは音量調節ボリュームはありません。
その代わり再生調整用のボリュームが付いています。
検波用真空管の感度を極限まで上げるボリュームです。これを上げすぎると「ピーー」と発振してしまいます。発振する手前に合わせ込むと明瞭で大きな音が聴こえてきます。

バリコンにダイヤル文字盤を付けてタコ糸で連動して動くようにします。
この文字盤の照明は豆電球でしたが玉切れしていて点きませんでした。そこで、電球色のLED2個を代用して付けました。これで玉切れの心配はありません。

最終調整が終わったので箱に入れ完全修復完成です。

マグネチックスピーカーの音を初めて聴きましたが結構まともな音です。
マグネチックスピーカーはコイルの中に針がありコイルに音声信号が加わると中の針が振動します。その針の先に紙のコーン振動紙が接着されていて振動紙から音声が聞こえる仕組みです。

ビンテージ真空管ラジオに命を吹き込みよみがえりました。ラジオ放送がちゃんと聴けます。
この時代の真空管ラジオでラジオ受信できる完動品はそう多くはないと思います。
このラジオで戦時中の大本営発表や玉音放送そして戦後の笠置シズ子や美空ひばりを聞いたのだろうと思うとグッときますね。

今回ビンテージラジオを修復して思ったことはいろいろ工夫されていたことです。90年前にこれを作り上げた技術者は少ない物資の中、これほどのものを作り上げていたことに驚きました。
それを思うと現代は恵まれています。部品などは小さく性能が良くそして安く手に入ります。
先人の努力と経験が現在の技術のみなもとになっているのだと思います。

色々感じることが出来た修復でした。

KT88全段差動プッシュプルアンプ

KT88で全段差動プッシュプルアンプを製作してみました。
KT88は見た目にもなかなか迫力のある真空管でビーム出力管と言われる真空管です。
また、トランスは今ではもう入手困難で貴重なTANGO製トランスを使用しました。やはりTANGOのトランスはいいですね。

回路は音にこだわり全段差動プッシュプル回路です。多少の出力は犠牲にしても音質にこだわればやはり全段差動でしょう。それでも最終出力は8W+8Wになりました。一般の音楽鑑賞には十分すぎる出力です。

内部の製作過程の写真です。
KT88のヒーター電流が大きいので太めの線で 配線します。

取付部品は平ラグ版に取り付け必要個所に配線していきます。
熱を考慮してコンデンサ類は真空管の足に直接取り付けることとはしません。必ず平ラグ経由で配線します。

配線の完成です。

本機の回路構成は初段と次段を6SN7を2個使い2段直結の差動回路を構成しています。
通常の差動回路はバイアスのバランス調整部分があります。(プッシュプル回路ではバイアス調整が必ず必要になります)
本機ではそのバイアス回路に自動バランス調整回路を採用しました。
この回路で経年変化での調整や真空管の差し替え時の面倒な調整が必要なくなり、いつでも気軽に真空管交換をすることが出来ます。
本機の大きな特徴です。

トランスは電源トランス、出力トランスともTANGO製トランスです。
出力トランスは40Wまで使用できるトランスで余裕のある動作です。出力トランスは出力真空管と共に音作りに重要な部品です。

とかく真空管プッシュプルアンプの音はシングルには勝てないと言われますが、全段差動アンプだけは違います。
プッシュプルで効率を求めているわけではなくあくまでもA級動作領域で音質にこだわっているのです。
プッシュプルの良い点である歪の少なさ、低域の安定性は備わっていますのでプッシュプルとシングルのいいとこ取りの回路です。


出力に関してはKT88のプッシュプル一般回路なら35~40Wは出るでしょう。この全段差動は8W+8Wです。
8Wもあれば十分すぎる大音量で音楽鑑賞できます。逆に35Wなんて一般家庭ではまず出さないかなと思います。

この「KT88全段差動プッシュプルアンプ」を限定1台奉仕品(6か月間無償保証付き)として販売しようと思います。

販売は音の工房アウトレット品・特別奉仕品ページから→https://otonokobo.jp/01_products/outlet.html

品名全段差動プッシュプル真空管アンプ
型式EL88全段差動PPアンプ
周波数特性5Hz~82,000Hz (8Ω負荷1W出力時-3dB)
出力8W+8W (8Ω負荷)
歪率特性全高調波歪特性  0.18%(2W)
利得22.3dB
残留ノイズ0.5mV以下
ダンピングファクターDF=10.0
入力感度0.43V (8Ω4W出力時)
入力インピーダンス20kΩ以上
スピーカー出力インピーダンス4~8Ω(16Ω可)
電源電圧と消費電力AC100V±5% 50/60Hz 消費電力175W
外形寸法(幅)402×(奥行)290×(高)180 mm
質量約13kg
使用真空管KT88(4本)、6SN7(4本)
入力端子形状RCA 
出力端子形状ターミナル バナナプラグ対応
AC100Vコネクタ形状3P ACインレットタイプ
使用ヒューズ定格4A125V(または4A250V) 
出力回路名全段差動式プッシュプル回路
付属品電源ケーブル、取扱説明書、保証書

EL34全段差動プッシュプルアンプ

EL34を使用した全段差動プッシュプルアンプを製作してみました。
じつは5年前に製作していたこの「EL34全段差動プッシュプルアンプ」に改良を行いリニューアルしたものです。

こうしてGT管の大型真空管が6本ずらり並ぶと壮観ですね。
全段差動プッシュプルアンプは何しろ音の良さが売りです。これも超三極管接続回路と同様、真空管全盛時代にはなかった新しい真空管アンプの回路です。音の追求を根本回路から見直し到達した真空管回路としては究極の回路とちょっと大げさに表現します。いや、大げさではないこの音です。

今回改良を行ったところは面倒なバイアスバランス調整部分に自動バイアス調整回路を組み込んだことです。
今までは真空管交換のたびに半固定ボリュームでバランス調整を行っていました。正確にはプッシュプルの2本の真空管の動作条件を正確に合わせ込み正しい差動動作を行うための調整です。

ここのバランス調整回路を自動化することで真空管交換や左右の真空管入れ替えでもいちいちバランスをチェックしなくてもよくなり非常に使いやすくなりました。
また、経年変化でバイアスバランスが変化しても自動回路ではいつも自動的に最適の状態にしてくれます。

真空管アンプにもいろいろな回路があり、回路によって出てくる音はかなり違うものです。
まず真空管出力回路を大きく分けると
・シングルアンプ:1本の真空管で出力している。音はいいが小さな出力しか出せない。
・プッシュプルアンプ:2本の真空管で出力している。大きな出力アンプで迫力あるが音自体はシングルより劣る。
その他にもあるが代表的な回路です。

シングルアンプは真空管の直線性の良い部分で動作するため一般的に良い音がします。
ただ、大きな出力は出ませんので大音量で迫力をと言うより落ち着いた音量の良い音を楽しむアンプと言えます。


それに対してプッシュプルアンプはプラス側信号とマイナス側信号を別々の真空管2本で増幅し出力トランスで信号を合体します。
このため大きな出力で迫力のある音が出てきます。
反面、信号を2本で別々に増幅し合体させるためか音質に今一つ満足できないところも感じられます。

今回の「全段差動プッシュプルアンプ」ですが、従来のプッシュプル回路の弱点である音質面を克服した理想のプッシュプルアンプになっています。
2本で構成していますがプラス側、マイナス側別々に増幅するのではなく両方とも真空管の直線性の良いところを使って増幅しています。
このため、音質はシングルアンプ並みに良い音で差動動作のためノイズや雑音に対しても強い回路になっています。
また従来のプッシュプルアンプほどの大出力はありませんが、シングルアンプよりはるかに大きな出力を出せ、余裕のある音量で豊かな音を楽しむことが出来ます。

つまり、シングルアンプとプッシュプルアンプのいいところを集めたアンプと言えます。
真空管アンプを自作される方は「超三極管接続回路」とならび、「全段差動プッシュプルアンプ」はとても人気のある真空管アンプなのです。

ただ、この全段差動プッシュプルアンプの難点と言えばバランス調整が必要な事です。
自作される方は測定器も持っており調整にも慣れているので特に問題にもならないでしょうが、一般の方が使用する場合はこの調整作業は結構ハードルが高いものです。
長い間使用していると生じる経年的ずれをバランス調整で調整したり、真空管交換時は必ず行わなくてはいけないこのバランス調整があります。

今回この煩わしいバランス調整を自動回路にしたため自動で常に最適な調整がされるようになりました。
一般の方でも安心して全段差動プッシュプルアンプをお楽しみいただけるようにしてみました。
この「EL34全段差動プッシュプルアンプ」を限定1台奉仕品(6か月間無償保証付き)として販売しようと思います。

品名全段差動プッシュプル真空管アンプ
型式EL34全段差動PPアンプ
周波数特性5Hz~80,000Hz (8Ω負荷1W出力時-3dB)
出力5.8W+5.8W (8Ω負荷)
歪率特性全高調波歪特性  0.18%(2W)
利得最終利得23.8dB
残留ノイズ100μV
ダンピングファクターDF=15
入力感度0.37V (8Ω4W出力時)
入力インピーダンス20kΩ以上
スピーカー出力
インピーダンス
4~8Ω(16Ω可)
電源電圧と消費電力AC100V±5% 50/60Hz 消費電力125W
外形寸法(幅)360×(奥行)250×(高)185 mm
質量約10kg
使用真空管EL34(6CA7)2本、6SN7 2本
入力端子形状RCA 
出力端子形状ターミナル バナナプラグ対応
AC100Vコネクタ形状3P ACインレットタイプ
使用ヒューズ定格4A125V(または4A250V) 
出力回路名差動式プッシュプル回路
付属品電源ケーブル、取扱説明書