真空管試験機の自作

以前、音の工房の製品に使用する真空管のペア選別のための「真空管試験機」を製作しました。以前は限定真空管の専用機でしたが今回は汎用の試験機を製作してみました。

真空管試験機でもいろいろな考え方があります。
簡単なものではヒーター切れの確認で導通チェックするものや既定電圧をかけて静的な値のチェックするものがあります。

しかし、真空管は音声信号を増幅する素子ですから音声信号(交流信号)がちゃんと増幅されているかチェックできるものが良いに決まっています。
つまりグリッドに音声信号を入れた時プレート電流がどの程度増幅して電流変化するか確認するのが最低限のチェックではないかと思います。(難しく言うと相互コンダクタンスGm計測になります)

今回製作したのは比較的簡易な方法で計測できる試験機です。
ラジオ温故知新: https://radiodesign.net さんのページに掲載された下記が原典ですで、
https://radiodesign.net/PDF/%E5%88%9D%E6%AD%A9%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA/1959-5/tube-checker.pdf
これを現代風にアレンジしたのが今回の試験機です。

上記が今回製作した回路図です。
回路図のPDFファイルです→https://otonokobo.jp/images/vtester.pdf

プレート電流検出は余っていた東栄変成器さんの出力トランスT-600の1次側7kΩを使い0.47μF250Vのコンデンサで取り出しゲルマニュームダイオード(ショットキーバリアダイオードの方が良いかも)で検波しメーターを振らせています。
メーターは50μAしか手持ちがありませんでしたが100~200μA程度でも十分でしょう。

入力信号はヒーター用のトランス1次側に90Vタップがありましたので分圧して0~2V(50Hz)AC電圧を作って音声信号としています。この信号をグリッドに入れた時のプレート変化をメーターで読み取ります。

使用したトランスです。左がプレート電流検出用の出力トランスT-600で右側がヒーター電源用のトランス16V1Aのものです。

ヒーター電圧はDC-DCコンバーターを使用し2.5~16V可変で設定できます。
Amazonで購入できます→https://amzn.to/4aBHhUQ

DC-DCコンバーター基板上の20kΩの多回転ボリュームを外し外付け多回転ボリュームにして楽にヒーター電圧変更ができるようにしました。
この多回転ボリュームもAmazonで入手できます→https://amzn.to/3ZM6gQo

真空管ソケットです。

部品が揃ったのでシャーシ加工です。

多くの真空管に対応しようとちょっと欲張ってしまいました。

シャーシが小さくちょっとすし詰め状態の配線になりました。
4ピンのUXソケットなどはこれから配線追加していきます。

完成したものです。

実際に12AX7の真空管を測定しています。
メータ下の目盛付きツマミが入力値を設定するツマミでAC50HZの音声信号を0.1Vごとに目盛っています。
メーターはプレート部分で変化した電流を51kΩ負荷につないだ時のAC電圧になるよう調整しました。
12AX7の場合、入力1.1VACの時メータが80%ほど振れます。メーター値50~100%は良品として良いでしょう。
また、12AX7のように内部に2個の回路が入っているものはスイッチで切り替えて簡単に値を見ることができます。これで2個の特性の不ぞろいも確認できます。

そんなに難しい回路でもありませんので興味のある方、電子工作に自信のある方は自作してみませんか。

音の工房→https://otonokobo.jp/
問合せ先→https://otonokobo.jp/contactus/contactus.html

真空管試験機の製作(2)

さて部品取り付けまでできて、いよいよ配線です。
その前に電源部分の電子回路を基板にし配線部の小型化を図ります。
設計回路に従い部品を取り付けていきますが少々基盤が小さかったようです。この小ささがあとで苦労することになります。

まず電源回路だけを配線し動作試験しました。

基板を載せて動作試験です。
まずヒーター回路。
数種類の真空管を使いますので真空管ごとにヒーター電圧が違うため切り替え回路が必要です。

ヒーターの切り替え回路はうまく動作しました。

次に2系統の電源回路ですが、ここはリップルとノイズが予想以上に多く、その対策で一部回路変更とフィルター回路の追加を行いました。
基板に余裕がないため基板からはみ出て部品配置になりました。
その後すべての配線を行い全体調整です。いくつかの修正を加え概ね設計通りの動作が確認でき「真空管検査機」の完成です。

しかし、実際に使ってみると入力電圧測定端子の位置が使いづらいので変更。部品が付いてからのシャーシ穴開け作業は困難を極めます。
さっそく真空管を挿して試験をしてみました。
なかなか使い勝手もよくなり、安定した動作をしています。

これで真空管のペア選別や動作確認が容易にできるようになります。

この真空管試験機は音の工房真空管アンプ専用機で汎用性はないですが、音の工房にとっては大きな力になること間違いありません。大切に使用していくことにします。

真空管試験機の製作(1)

真空管全盛の昔には「真空管試験機」と言う測定機があり、今でも使用している方がいます。
いろいろな種類の真空管の性能を計測する測定です。

  Wikipediaの画像

ただこの測定機は真空管の代表的な値を測定するだけで、詳細なデーターを測ることは出来ません。真空管が大体使えるものか、かなり劣化しているか、壊れているか程度のものでした。

さて、ステレオ真空管アンプを作ろうとすると右と左の増幅度の差が気になってきます。左右に同じ信号を入れた時、出てくる出力も左右同じでなければ音の定位がずれることになります。
つまり左右二つのアンプの増幅率をきっちり合わせる必要があるのです。そのためには左右の真空管特性が揃ったものを使う必要があります。

真空管は近代部品のように同じ性能のものを確実に作るこは出来ません。そこで多くの真空管を測定して性能の近いものを2本選び出し、ペア真空管として販売されています。それを左右の回路に使うと性能の揃ったステレオアンプが出来上がるのです。

ただ、市販のペア真空管は代表的な条件での測定でペアを決めています。
ところが作るアンプの条件が違うと必ずしも同じ増幅度にならないことがあります。
また、フォノイコライザーのような高い増幅度のアンプでは市販のペアでは対応できない事があります。

そこで、真面目に真空管アンプを作ろうとするとそのアンプに合った特性の真空管を選ばなくてはいけないことになります。
そこで音の工房のアンプに合わせた真空管試験機を新たに製作することにしました。

この試験機は音の工房アンプに特化したもので汎用試験機でありりません。
アンプと同じ動作状態で静的特性と動的特性を測定でき、精度の高いペア真空管選別が出来るようにします。
製作手順としては
(1)真空管試験機回路設計
(2)必要部品収集
(3)シャーシ配置設計
(4)シャーシ穴開け加工
(5)部品取り付け
(6)配線
(7)配線チェック、電源投入、動作確認
(8)調整検査
(9)完成

さて順調に進むでしょうか。
製作開始です。
回路設計が終わり部品もほぼ揃いました。
さっそくシャーシの配置設計です。

この配置設計では使いやすさを優先し部品同士の干渉を考慮し配置します。
部品の穴位置を決めシャーシに印をつけます。

穴開け作業。この作業が一番散らかり大変な作業です。
丸穴はボール盤やドリルで出来ますが、四角穴は大変です。大まかな穴を空けてあとはヤスリで角穴に仕上げていきます。根気のいる作業です。

穴開けが出来れば半分以上終えた気分になります。
さっそく部品が正しく付くか取り付けてみます。